decoration(装飾) 4/26

もし、わたしの肌がすべて毛皮になりかわったらどうなるんだろう。


猫のように、触ると静電気が起きるのだろうか、ふんわりとした毛並みになるんだろうか、髪の毛と毛の境目はちゃんとあるんだろうか、服を着る必要もなくなるんだろうか、ボディソープは必要なくなるんだろうか、水に濡れると寒いのだろうか、夏はずっと暑いのだろうか、紫外線も気にならなくなるのだろうか、掃除は面倒になるのだろうか。
もしそうなったら、できれば柄は薄茶のとらが良い。風にも少しなびくほどの長さで、春の日はお日様の光を全身で浴びて、香水なんかにたよらないでお日様のにおいをふんだんにためこんで、雨の日は風邪をひいてしまわないように注意深く道を歩いて、そういう日だけ、くるぶしまであるレインコートを着たって良い。
きっとこんな姿じゃどんな仕事だってできやしないし、本物の猫のように一日中、丸まったりのびたり気ままに過ごしたい。気が向いた時に好きなものだけを食べて走りたければ走ってたまには外に出て散歩して、することがなければ心地良いベッドの上で好きなだけ眠るんだろう。
きっとこんな姿ならいろんなことにも諦めがついて、誰にも相手にされなくなってもひとりで何もかもしなくてはいけなくなっても、寂しくないかもしれない。もしできることならば、本物の猫のように振る舞って、誰かの家に住み着くというのも悪くない。猫に見えるわたしは、どんなに気ままに振る舞っても、誰もが許してくれるんだろう。


なんて。あり得ない。
やっぱりわたしは綺麗にならなくては。磨かなくては、磨かなくては、磨かなくては。誰かに、誰でも良い誰かに認めてもらえるそのためには。
そう、呪文のように繰り返す。